電子カルテ導入の現場で本当に起きる課題と、IT担当者が担うべき役割

医療機関における電子カルテ導入は、単なるシステム入れ替えではありません。 現場のワークフロー、組織文化、意思決定構造、ベンダーとの関係性など、 医療機関特有の複雑さが一気に表面化するプロジェクト です。

私は90床規模の医療法人で電子カルテ導入と基幹システム運用を担当し、 導入前後の混乱、現場の抵抗、ベンダー調整、ネットワーク刷新など、 多くの課題に直面してきました。

この記事では、現場で実際に起きた課題と、 IT担当者が担うべき役割についてまとめます。

1. 電子カルテ導入で必ず発生する“現場の混乱”

電子カルテ導入は、医療現場にとって大きなストレスです。

  • 操作に慣れない
  • 紙カルテの方が早い
  • 入力項目が多い
  • 画面遷移が分かりづらい
  • 目的の業務ができない
  • 端末が足りない
  • ネットワークが遅い

こうした不満は必ず出ます。

特に導入初期は、 「電子カルテが悪い」ではなく「慣れていないだけ」 というケースが多いのですが、現場はそうは感じません。

ここで重要なのは、 現場の声を“否定せずに受け止める”こと です。

2. 医療法人特有の意思決定の難しさ

医療機関は一般企業と違い、 意思決定が“縦割り”になりがちです。

  • 医師
  • 看護部
  • 事務部門
  • 経営層
  • ベンダー
  • コンサル

それぞれが独自の意見を持ち、 利害関係も異なります。

電子カルテ導入は、 全員の利害がぶつかるプロジェクト です。

そのため、 「誰が最終決定権を持つのか」 「現場の意見をどう吸い上げるか」 「ベンダーの提案をどう判断するか」 が曖昧だと、必ず混乱します。

3. IT担当者が担うべき“調整役”という重要な役割

電子カルテ導入で最も重要なのは、 IT担当者が“技術”と“現場”の橋渡しをすること です。

IT担当者が担うべき役割

  • 現場の要望を整理し、優先順位をつける
  • ベンダーに正確に伝える
  • ベンダーの提案を技術的に評価する
  • 経営層にリスクとコストを説明する
  • 現場の教育・サポートを行う
  • トラブル時の一次対応を担う

特に、 「現場の言語」と「ベンダーの言語」を翻訳する能力 が求められます。

4. 導入後に起きやすいトラブルと対策

電子カルテ導入後は、以下のようなトラブルが頻発します。

よくあるトラブル

  • ネットワークが遅い
  • こんなはずじゃなかった
  • 端末が不足する
  • 操作ミスによる入力漏れ
  • 権限設定の不備
  • プリンタトラブル
  • 他システムとの連携不具合

対策

  • 導入前にネットワークの棚卸し
  • 導入前に現行業務フローを精査
  • 端末台数の余裕を確保
  • 権限設計を丁寧に行う
  • 現場向けマニュアルの整備
  • トラブル対応フローの明確化

特にネットワークは、 電子カルテの“生命線” です。

5. 現場で学んだ教訓

電子カルテ導入を経験して強く感じたのは、 「技術よりも、人と組織の問題の方が難しい」 ということです。

  • 正しいことを言っても通らない
  • 現場の声が経営に届かない
  • ベンダーの提案が最適とは限らない
  • コンサルの意図が不透明なこともある

だからこそ、IT担当者には 技術力だけでなく、調整力・説明力・現場理解 が求められます。

まとめ

電子カルテ導入は、医療機関にとって大きな変革です。 IT担当者は、その変革を支える“縁の下の力持ち”です。

現場の声を聞き、技術的な判断を行い、 組織全体を巻き込みながら進めていく。

その経験は、必ずあなたのキャリアの財産になります。

 

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